男が陸奥にたどり着いて、その土地の女(男に恋心を抱いた)が詠んだ和歌に以下のようなものがある。
男が女のもとへ行ったが、夜中のうちに帰ってしまった後の場面である。
「夜も明けば きつにはめなで くたかけの まだきに鳴きて せなをやりつる」
と詠んだ。
この歌は面白いなあと思った。
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集の第三巻の訳文は(以下「」は引用。原文ママ)
「夜が明けたら くたかけ(鶏のやつめ)を きつ(水桶)に沈めてやる 明ける前に鳴くから あのひとが帰ってしまったのよ」
の枕詞の様に鳥の鳴き声は朝を連想させるが、鶏を八つ当たり的に水槽(水桶)に沈めるってイメージをしたら、おかしくてしょうがない。
早く帰ってしまったのは鶏のせいであり、
「あの人が早く帰ったのはてめぇのせいだおらぁあああ」
って言いながら女性が鶏を水に沈めるのは笑わずにはいられない。
(まあ、もちろん実際にそうしたわけではないだろうが)
ただ、おもしろいのはこれだけではない。
かるーく調べると上記のようなとこにたどり着いた。
この歌、結構難解な歌だそうだ。解釈がいくらかあり、鶏は狐に食わされる、上記の新解釈ではアイヌ語を踏まえて、狐に食わされたわけでも水に溺れさせられたわけではないとしている。
ここまで、解釈できる57577。日本文学(?)の深さは垣間見えた気がする。
ただ、面白いという理由で水に沈める説は推したい。