【本を読んで】星の王子さま

これまでの人生で「星の王子さま」はずっとなりを潜めていた.どこで知ったかは覚えてない.気づいたら知っていた.それぐらい今の人々に愛され続けた物語の一つなのだろうなということをそこで実感する.

本屋で見かけて,いつの間にか買っていた.「読んでおかなければ」そんな強迫観念のようなものだったかもしれない.少し後悔しているのはもう少しでも早く読んでいれば,箱根に""あった""星の王子さまミュージアムに行けたのになということ.

私が読んだのは岩波文庫が出版している内藤濯さんの訳である.

読んだときに心動かされたところが一つあったのでその周辺で感想を書く.(解説では高度な童話と言ってる)この本の全ての場面でサンテグジュペリが伝えたいことがあるとは思う.しかし,あまりに煩雑になりそうなので一点で書く.(「心で見なければ、物事は良く見えない、肝心なことは目に見えない」とかね.それらは省略 !!)

二時間くらいで一気に読みました.

印象的なシーンが一つ.

ぼくは、つるべを、王子さまのくちびるに持ちあげました。すると、王子さまは、目をつぶったまま、ごくごくとのみました。お祝いの日のごちそうでも食べるように、うまかったのです。その水は、たべものとは、べつなものでした。星空の下を歩いたあとで、車がきしるのをききながら、ぼくの腕に力を入れて、汲みあげた水だったのです。だから、なにかおくりものでも受けるように、しみじみとうれしい水だったのです。

岩波文庫 星の王子さま 著 : サン=テグジュペリ 訳 : 内藤濯 p157より

このシーンは砂漠で墜落して遭難(?)している「ぼく」が水の持ち合わせがなくなったので砂漠で出会った王子さまと一緒に井戸を探し,見つけてその井戸で水をくみ上げ,王子さまに水をあげるシーンである.

ここを読んだ瞬間,慈しみとも言うべき感情が沸き上がってきて胸がいっぱいになった.なんて愛おしいシーンなんだろう.と.

ただ,「ぼく」が王子さまに水をあげるシーンであるが,ここで感じたのは,人のためになにかをするという行為の素晴らしさに「はた」と気づいたのだ.当たり前のように「人のために何かをする」のは素晴らしい.短絡的に,もっと言えば思考停止でそういうものだとして生きていると人のために何かをする(上司として,先輩として世話をするとかね)ことが普通に日常のシーンである.けれど,その行為が愛おしいと思う感覚を思い出した.

親や,兄弟,先生,友達のために何かをしてあげてその笑顔を初めて見た時のようなピュアな感覚.人に喜んで貰おうとして行動を起こしたあの感覚.喜んでもらおうと準備している時の,あの,幸せな感覚.なんなら,旅行先で友人にお土産を選んでいるときの感覚でもあるかもしれない.

その気持ちそのものが愛おしいものであり,それをぶつける相手がいてそれを受け取ってくれることがなにより嬉しくて,もっと大切にするべき感情なのかもしれない.

そんなことを思いながらこのシーンを読んで心がなんか溢れそうな気持ちになった.