【読書記録】豊かな人生にするために『成瀬は天下を取りにいく』著:宮島未奈

成瀬は他人の目を気にすることなくマイペースに生きている。

「成瀬は天下を取りにいく」を読了しました.「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」から始まる.一瞬にしてどういうこと???と引き込まれる一文だ.「成瀬は天下を取りにいく」を手に取った理由はこの本の帯に書かれている著名人からのコメントで「成瀬」が多く入っていたからだ.主人公がべた褒めされているのは中々無いことだと思ったので,気になって買ってみた次第.一日ですぐ読み終わりました.

読み終わってみると,著名人からのコメントで「成瀬」がたくさん入っていたことは自然なことだと思った.それほど成瀬は魅力的なのだ.一言で言えば彼女はまっすぐ生きていることが魅力だ.西武大津の閉店に合わせてカウントダウンのテレビ中継に毎日映るなんて,誰が考えついて,誰が行動するのだろうか.もし思いついたとしてもほぼほぼ誰もやらないし意味ないと思うだろう.でも,成瀬は行動した.そしてその行動を楽しんでいる.ちょっと羨ましかった.一番最初に置いた引用文は本文から引いているが,私から言わせればマイペースというよりも自分のペースで爆走している気はするが,その爆走中でも他人への思いやりは忘れていないといった印象を本書を読み終わって感じた.

帯のコメントで柚木麻子さんがこんなことを書いている

可能性に賭けなくていい。可能性を楽しむだけで人生はこんな豊かになるのか。

このコメントが私の言いたいことをすべてを代弁している.少し行動してその行動の結果の可能性を楽しむだけで豊かな人生が来るのかもしれない.もちろん,その可能性が当たることに一喜一憂せずにその過程を楽しめば良い.その可能性が当たらなくても,その過程で別の可能性が当たるかもしれないのだ.それを可能にしているのが成瀬の真っ直ぐな生き方だ.単純な動機と好奇心で行動している気がする.行動原理が一貫していてスッキリした性格で,一度宣言したら行動して,親しい人間の言葉を真摯に受け止める.いつの間にかそんな成瀬のファンになってしまった.

この小説は滋賀が舞台だ.ローカルネタが多く存在し,「こんなの滋賀県民しかわからないでしょ」と何度思ったか.でも,ローカルネタがあることでそこに成瀬が本当にいるような気がした.滋賀県民は他県民よりもこの本を楽しめているのかなと思うと少し悔しい.*1

勇気を出して色々やってみようと間接的に励ましてくれるような本でした.続編も買いに行きます.

www.shinchosha.co.jp

*1:もちろん私は滋賀県民ではない.現在の住民票は東京都だ